「二足のわらじを履く」
日本語の慣用句で「二足のわらじを履く」というものがありますよね。
意味としては「両立しえないような二つの職業を同一人が兼ねること。特に、江戸時代、博徒が捕吏を兼ねることをいった。現在では「会社員と作家の二足の草鞋を履く」など、両立が困難と思われるような職業を兼ねることにもいう。」(コトバンクより)という意味があります。
テレビの何かの番組でこの言葉を改めて聞いて、はて、この言葉が出てきたときにどう手話通訳をしようかと悩みました。
例えば「Aさんはカフェの店員とデイトレーダーの二足のわらじを履く生活を送っている」という例文の場合、そもそもわらじを表現して”2つを履き替える”といった表現をしてしまったら絶対に伝わりません(まぁ日本語の意味をよく知っている方なら翻訳してくださる方もいるでしょうけれども)。かといって日本語に「二足のわらじを履く」という慣用句があって、職業の両立を意味する言葉があるというのを手話通訳で消し去ってしまっていいのかどうか、というのは迷いがあるところです。翻訳して意味が伝わればそれで良いのか、という葛藤ですね。
それは対象者次第ではあるのですが、「2つの仕事を兼ねている」だけではその慣用句が持つ「普通ではできない、両立が困難な」というニュアンス、さらに言うと「二足のわらじを履くくらい大変な」ニュアンスをどう伝えるのか、というのはこれと言った正解はないのはそうなのですが、課題になるかな、と思います。
日本語にはこのような慣用句がとても多いですよね。その時に通訳対象がどういう人なのか、または映像などで目に前にいるのかいないのか、でどう表現をするのか、それを(事前に資料があればともかく)突然講演者が言われたりすると、さてどう表現するか…こんな葛藤を手話通訳者はいつもしているわけなんですよね(しかも同時的に)。
ですがそれがなんだろう、醍醐味でもあったりするんです。それで意味が伝わって「わかった」と言ってくださる時なんかは特に、ですね。まだまだ勉強を続けないといけませんね。
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