手話を学んでいる時に頭に入れてほしいこと(下)
次はマクドナルド。昨年の冬にカウンターのメニューを無くしちゃいましたよね。まぁ、単純に不便なんですけど、ろう者が指さしで注文できなくなっちゃいました。ドライブスルーも基本的に音声メイン。ほとんどのろう者は(気をつかって)わざわざ車を駐車場に止めて、お店の中に買いに行って…と不便を強いられます。マクドナルドに限りませんけどね。
さっき起きた東北地方の地震のニュース、たまたまNHKニュース9を見ていましたが、最初の10分間は字幕が付きませんでした。NHKニュース9は最近では生放送ですが字幕がついていますが、地震速報になると字幕が消えてしまいました。
手話の話が出てこないじゃないかって?そうなんです。たまたま今の3つの話題は文字(字幕)の話でしたが、手話ならなおさらです。手話通訳付きで映画を見られる(これについてはどうなのか、という面もありますが)、手話でお店の店員さんなどと話ができるとか、ごくごく限られてしまっています。最近はテレビ電話で手話通訳ができて、それを介して店員さんと…というのが携帯ショップなどで増えてきていますが、ろう者の評判はあまりよくありません。やっぱりそこにいる店員さんに手話で説明してもらう、もしくは隣で手話通訳してもらいたいですよね(画面を通すとわかりにくい、というのもありますし、地域が違うと手話も違う、という面もあります。もちろん、それだけでテレビ電話手話通訳を全否定するものではありません)。
手話を学んでいるとき、聞こえない人が生活する中でぶち当たる壁。映画もそう、ファーストフードもそう、地震情報もそう、他にも何でもそう。一つ一つはちょっとした工夫で軽減できるかもしれない、けどそれが次から次へとやってくるんです。「聞こえない事による不便」が。「不便」だけではなく、時には「差別」も…。
自分は聞こえますので、いくら代弁してもろう者の気持ちはわからないと思います。それはきれい事を言ってもしゃあないところ。でも、手話を15年勉強して、かつ聞こえない家族がいて(あんまり関係ないかも)、運動にも(一応)参加していて…でも聞こえる社会で生活している聞こえる人間。その立場で「聞こえないことによる壁ってこれだけたくさんあるんだ、これも、これも」って思うんですよ。
やっと言いたいことまでたどり着きました。手話は難しいし、覚えるのにも必死でなかなか上達しなくて大変かも知れません。でもふと自分の生活に戻ったとき、「もし聞こえない人がいたらどうなるか」「聞こえなかったらどうなるか」をちょっと考えて欲しいのです。深く考えすぎると悩んでしまいますし、妙な思い込みにもつながりますのでちょっとだけで。そしてどうやったら改善できるだろうか、ろう者当事者から訴えてもらうのもそうだけど、聞こえる社会に住む聞こえる人という立場でできることは何だろうか…実際に動けたらすごい!ですけど、動けなくてもいいんです。ちょっと考えて、意識して、何気ない会話で話してみて、そして考えて、そしたら動いてみる…手話を学んでいるだけに限りませんが、一人一人にそういう意識が広がっていったら、何もしないよりは良くなりませんか?
ろう者になりきる必要はありません。これはハッキリ言って無理です。でも、手話という言葉を学ぶことで視野が広がると思うんです。実際自分は広がりました。逆に手話にハマリすぎると視野が狭くなっちゃうかも知れません(聞こえない人の立場に立ちすぎて大局的にものを見られなくなる。ありがちです)。特に勉強し始めのころはいろいろと刺激を受けることが多いですからね。
手話を勉強しているから、気づくことがある。あれ、って思うことがある。その気づきを大事にしてほしいなぁと思うんです。「私が!」「俺が!」フンガー!!ってなるのも良いかもしれませんが、疲れちゃいますよ。まずは「あ、そうか」から。そしたら、手話を勉強して、ろう者と話して、何かができて…できちゃうんですよ。うっかり手話通訳になってくれたら、同業者としてとっても歓迎します(もちろん強制はしません)!手話の勉強から離れてしまった方も、勉強する時間がない、という人も、「あれ?」「あ、そうか」と思うことが増えたら…これが大きな力になっていくんじゃないかな~と思います。
いろいろ長いこと書きましたが、どうでしたか?できそうですか?面倒だと思いましたか?これはあくまで一つの意見ですから、参考にするも良し、え?と思うのも良し、いろいろあると思います。上から目線だと思ったらごめんなさい。でも、少しでも参考になったらとてもうれしいです。
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コメント
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>きょう さん
初めまして!コメントありがとうございます。
手話を学ぶ、ということに限らず、何かに打ち込むと「フンガー!」ってなっちゃうこと、ありますよね。
とても真面目な方に多いと思います。手話や聴覚障害の世界ってとても深いので、わけがわからなくなることもあるかと思いますが、そんなときは肩の力を抜いて、はて、どうだっただろうか、と考えてみるのも良いと思います。
当事者の方からしたら失礼な発言になるかも知れませんが…。
自分の立場で、気づけること、できることから、やりましょう!
投稿: ウメ | 2013年4月30日 (火) 21時19分
はじめまして。きょうと申します。
記事を拝見しました。
とても今の私の心に染みるお話でした。
私は大学生で一緒にいる子が聴覚障害を持っており、それをきっかけに手話を学習しているのですが、知れば知るほど色々な問題や壁にぶつかって、それをどうにかしたいといっぱいいっぱいになっていました。
まさにフンガー!!となって疲れてしまっている状態です・・・。
しかしこの記事を拝見して、冷静になれました。
勢いづいて疲れるほど行動するのではなく、まず気づきを大切にできるだけの余裕を持とうと思います。
突然すみませんでした。
一言お礼が言いたかったので、コメントさせていただきました。
失礼しました。
投稿: きょう | 2013年4月30日 (火) 20時04分
>しゅわしゅわわさん
続けてのコメントありがとうございました(^^)/
講習会に通い始めたとのこと、いかがでしょうか?楽しんでますか?
身につけたいと思った気持ちをとても大事にしてほしいです。
自分もそうしているつもり…です。今のところ(まぁいろいろありますが)手話やめたい、と思ったことはありません。
手話やろう者の生活もそうですが、いろいろ知ると視野が広がりますよね。それが自分の生活の糧にもなるし、少しでも協力できればもっと良いことだと思います。
覚える早さとか、手話通訳になりたいとかそうでないとか、とりあえずはそういうのは関係無しで一緒に頑張りましょう~(^^)/
投稿: ウメ | 2013年4月19日 (金) 18時23分
(完全に勘違いなのですが)
「手話を学んでいる時に頭に入れてほしいこと」
今の私に向けてのメッセージかと思いました。
手話サークルに通う以外、講習会など一切受講経験なかったのですが、
この春から自治体主催の講習会に通い始めました。
通訳者になる!という確固とした決意はまだありません。
ただ、軽い気持ちで行ったサークルで、
「見てわかる」表現の面白さ、豊かさに魅了され、
自分の手話がろう者に通じたときの喜びだけで通い続けて8年・・・
一度きちんと勉強して技術を身に着けたいと思ったのです。
手話と出会って、ろう者の生活を知るうちに
私の視点が変わったように思います。
そのことを大切にこれから勉強頑張ります。
投稿: しゅわしゅわわ | 2013年4月19日 (金) 17時49分